今回の記事のテーマはドミナントモーションです。
音楽理論の本当に基本的な部分ではありますが、理論の中でも一番と言っていいほど大事な項目です。
名前だけでなく、ドミナントモーションの理屈、サウンドの特徴までしっかり理解しましょう!
そもそもドミナントとは
まずは「ドミナント」という言葉の意味を確認しましょう。
ドミナントというのはM3とm7の関係の事を言います。
つまりM3とm7が両方含まれているコードの事をドミナントコードといい、またスケールはドミナントスケールと呼ばれます。
例えばG7の構成音はR、M3、P5、m7なので、ドミナントコードだと言えます。
図1 G7の押さえ方
M3とm7が含まれることによりコードの響きがすごく不安定になります。
実際にG7のコードを聴いてみましょう。
不安定な響きに聴こえませんか?
これはM3とm7がコードに含まれている為です。
試しにG7のM3とm7だけを聴いてみましょう。
これだけでG7と同様の響きが感じられますよね。
これがドミナントの響きです。
耳でもしっかりこの雰囲気を覚えましょう!
なぜ不安定に聴こえるのか
M3とm7を同時に鳴らすとなぜ不安定に聴こえるのか。それは、この2音がトライトーンの関係になっている為です。
図2 G7のトライトーンの位置
トライトーンとは
日本語で三全音といい、その名の通り全音3つ分の距離になっています。
音程でいうと増4度関係です。
トライトーンは「悪魔の音程」の呼ばれる程の不安定で不快な響きを持っています。
先程聴いたM3とm7の響きがこれですね。
図3 トライトーン
なお音程の基本の紹介記事を別に書いていますのでそちらもご参照ください。
ドミナントはトライトーンを含み不安定な為に、安定するコードに移動しようとする性格があります。
安定しているコードといえばトニックですよね。
この安定しようとしてトニックに向かう進行の事を、ドミナントモーションと言います。
図4 ドミナントモーション
実際にドミナントモーションをしているG7→Cの音源も聴いてみましょう。
Cがいつも以上に安定して聴こえませんか?
ドミナントで不安定な状態にいたからこそ、トニックがより安定して聴こえる効果があります。
また逆を言えば、トニックという安定があるからこそドミナントを不安定と感じることが出来るんですね。
ドミナントモーションの原理
ではなぜドミナントモーションが安定するように感じるのか、その理由を細かく見ていきましょう。
トライトーンの反進行
G7の場合、M3のbとm7のF音がトライトーンになっています。
このトライトーンを解決するために、G7→Cという進行でB音が半音上行してCのルートであるC音に、F音が半音下行してCのM3であるE音に移行します。
このように片方が半音上行し、片方が半音下行することを反進行といいます。
反進行により不快なトライトーンが解消され、安定を得る事ができます。
図5 トライトーンの反進行(五線譜)
図6 トライトーンの反進行(指板)
反進行部分のみを音源で確認してみましょう。
これだけでも解決感が感じられませんか?
この2音こそがドミナントモーションの肝である事がわかりますよね。
強進行
コード進行には強進行と弱進行という2つの進行方法があるのをご存知でしょうか?
強進行とは、4度上のルートに進む進行の事をいいます。
4度進行は、強進行というその名前の通りとても強い進行感を持っています。
例えば、ジャズスタンダードにも挙げられる「枯葉」という楽曲、前半部分は全て強進行になっています。
図7 枯葉の前半部分コード進行
図8 枯葉のルートモーション
このようにジャズを始め、強進行は多くの楽曲で意図的に取り入れられています。
逆に弱進行とは4度下のルートに進む進行の事を言います。
強進行よりも明らかに進行感が劣ります。
これは昔は禁則とされていましたが、現代ではガンガン使われています。
図9 強進行と弱進行のルートモーション
ドミナントモーションのV7→Iは強進行になっているので、繋がりが強く、聴き心地の良い進行になっています。
上記2つの
- トライトーンの反進行での解消
- 強進行
この二つの要素を同時に含んでいる進行は、実はドミナントモーション以外には存在しません。
その為、ドミナントモーションはこれほどまでに解決感のある心地の良い進行となっているのです。
まとめ
ポップスでドミナントモーションが出てこない曲は皆無と言っていいでしょう。
またドミナントモーションが出てくるところはセクションの区切りや部分転調など、楽曲の重要なところばかりです。
作曲やアナライズでかなり役に立つのでしっかりと理解しておきましょう!
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