近年、ファンフレットのギターが多く販売され、フレットについて気になっている方も多いのではないでしょうか!
フレットによっては押弦のときの力加減や弾き方を変える必要もありますが、各フレットの特徴を把握することで、出音や弾き心地など、自分のスタイルにあったフレットを見つけることができます。
今回はフレット配置の種類、素材の違いや出音への影響などについてご紹介します!
フレットとは
フレットは指板に打ち込まれた金属で、音に音階をつけるためにあります。
フレットがないものは、フレットレスにカテゴライズされ、スライド奏法時などは特に独特の出音になります。
フレットは素材によっては消耗品で、錆や削れなどにより交換が必要になります。
チョーキングを多様するスタイルのギタリストで購入後数年が経ち、まだフレット交換していない方は、フレットの減り具合をメンテナンスに出して見てもらうことをおすすめします。
また、フレット浮きなどがある状態ではビビリの原因やピッチ(音高)が悪く聴こえてしまうという事に繋がります。
ピッチ(音高)の悪さ
ピッチが悪いと音痴に聴こえ、アンサンブルも崩れてしまいます。
何より自分の耳がピッチ(音高)の悪い音に慣れてしまうため、ピッチ(音高)が悪いまま弾き続けるのは注意が必要です。
素材
ニッケル
出典:サウンドハウス
もっとも多くのギターに使用され、定番です。
価格帯の違うギターであってもフレットにはニッケルが使用されていることが多いです。
ニッケルは弦よりも柔らかい鉄でできてるためフレット削れが発生します。
フレット削れが強く発生している場合はメンテナンスに出すことをおすすめします。
フレット削れ
少し見えにくいかもしれませんが、フレットに凹んでいる部分があるのが見えますでしょうか。
この部分がフレット削れが発生している部分です。
出音
次に紹介するステンレスと比べると出音の硬さはなく、定番だけあって万能でバランスの取れた出音です。
ステンレス
出典:サウンドハウス
ニッケルと比べ、滑りがよくチョーキング奏法やビブラート奏法がスムーズにできます。
ステンレスは弦よりも硬い鉄でできているため、長い使用でも削れることがほぼなく、購入当初のフレットの状態を維持できます。
そのため、削れによるフレット交換をする必要はほぼありません。
弦とフレットが擦れれば少なからず摩耗しますので、ステンレスでもフレットの削れが気になる方はメンテナンスに出すことをおすすめします。
出音
ニッケルと比べて硬い鉄でできているため、出音が硬くなり、特に高音域で硬さを感じることがあります。
この高音域の硬さはよく「キンキンした感じ」と表現されています。
ただイコライジングで工夫すれば気にならなくなる程度の硬さの印象です。
出音の硬さを柔らかくしたステンレス
出典:サウンドハウス
願ったり叶ったりです!
Freedom Custom Guitar Researchから販売されているSTAINLESS FRET WARMとSTAINLESS FRET SPEEDYというオリジナル・ステンレスフレットは、ステンレスフレットの特有の高音域の硬さが和らげられているステンレスフレットです。
サイズ
サイズには、「高さ」、「幅」があり、crown(クラウン)部分についてのサイズです。
フレットは部分により名前があり、指板から出ている部分をcrown(クラウン)、指板に埋め込まれている部分をtang(タング)と呼びます。
フレット部分名
※斜線箇所が該当部分です。
通常「フレット」といえば、crown(クラウン)を指しています。
フレット交換を検討する際は主にこのcrown(クラウン)のサイズに確認します。
幅
メーカーごとにとても多くの幅が用意されています。
MGDでは目安となる幅を3種類ご紹介します。
狭め | 2.0mm |
---|---|
中間 | 2.4mm |
広め | 2.8mm |
幅の特徴
幅が狭い程、フレットと弦が触れる面積が少なくなるためサスティンが伸びるようになりますが、スライド奏法やグリス奏法の時にフレットの引っ掛かりを感じる場合もあります。
「カッカッカッ」とフレット前後で止まってしまうような感覚です。
幅が広い程、狭めと比べると上記のフレットの引っ掛かりは軽減される傾向があります。
高さ
高さも幅と同様にメーカーごとにとても多くの幅が用意されています。
MGDでは目安となる高さを3種類ご紹介します。
低め | 1.0mm |
---|---|
中間 | 1.2mm |
高め | 1.4mm |
高さの特徴
高さが高い程、軽い力で押弦できるため、チョーキング奏法、ハンマリング/プリング奏法などが演奏しやすくなります。
高さがある程、指が指板から浮いた状態になるので、力一杯に弦に押さえると音がシャープします。
シャープすると音痴に聴こえたり、アンサンブルが崩れたりしますので、押弦の力加減は気をつけたいところです。
シャープ具合は力の加減によりますが、最大で半音近くシャープする印象です。
弦を押さえるとき(押弦)の位置と力加減についての記事を書いていますので、ぜひ参考にしてみてください。
幅と高さの関係
パッと見れる表にしてみました。
表を見ながら理想のフレットをイメージして、縦/横/斜めと組み合わせることで「幅」、「高さ」のおおよそを決めることができますので是非あなたの理想を当てはめてみてください!
幅 | 狭い | 広い |
---|---|---|
サスティンが伸びる | スライド奏法/グリス奏法が容易 | |
高さ | 低い | 高い |
スライド奏法/グリス奏法が容易 | チョーキング奏法、ハンマリング/プリング奏法が容易 |
出音
出音は、crown(クラウン)部分の金属量で変わってきます。
低いフレットより高いフレット、狭いフレットより広いフレットの方が、金属量は多くなります。
金属量が少ない(狭く/低い)
弦が金属に触れる面積が少ない分、木の音を感じれる丸みがある出音になります。
金属量が多い(広く/高い)
金属量が少ないフレットに比べると、木の音の感じは軽減され、パリッとした鮮明な出音になります。
配置
スタンダード
ギターのフレット配置といえばこれ!というくらいもっと多くのギターに採用されている配置で定番です。
むしろこのスタンダードな配置以外がモダンで先進的な印象です。
サークル・フレッティング・システム(C.F.S)
出典:FUJIGEN
サークル・フレッティング・システム(C.F.S)とは、フジゲンの特許技術でギター・ベースに使われるフレッティング技術です。
このC.F.Sはフジゲンのギターの全てに採用されています。
また、HISTORYのギターの全てにもこのC.F.Sが採用されています。
特徴
各弦と各フレットが直角に交差するため、スタンダード配置よりもヌケ、立ち上がり、サスティーンの3点が改善されます。
1.ヌケがよくなる。
ギター本体のヌケがよくなるとギター単体で効果があるというよりは、アンサンブルで本領発揮します。
特に深いオーバードライブサウンドやディストーションサウンドはアンサンブルで埋もれがちですが、ギター本体のヌケがいい事でバランスのとれたアンサンブルに近づくことができます。
2.音の立ち上がりが速くなる。
音の立ち上がりが速くなると、アタック感が強くなり、アンサンブルで音に強さが含まれるため、埋もれずらくなります。
音の立ち上がり
ピッキング → 弦が振動 → 出音
この一瞬の時間の長短のことを音の立ち上がりが速い/遅いと言います。
ピッキングから出音までの時間が長いほど音の立ち上がりが遅く、短いほど音の立ち上がりが速いと言います。
3.サスティーンがよくなる。
サスティーンをよくするには、ピックアップを低くするなどのセッティングの変更やパーツの変更が必要になり、なかなか改善させることは難しいです。
C.F.Sではこのサスティーンをギター本体で改善することができます。
サスティーンがあるため、ロングトーンの最後の最後まで感情を表現することができます。
泣きのソロで泣きたいだけ泣けます!
ファンフレット
ファンフレットは「マルチスケール」とも呼ばれ、どちらも同じフレット配置を指しています。
テクニカル志向のギタリストが7弦、8弦など多弦ギターで使用していますが、6弦でもファンフレットを採用しているギターはあります。
特徴
1.フレットが平行ではない。
スタンダート配置のフレットはすべて平行に打ち込まれていますが、ファンフレットは高音弦から低音弦に向かって広がっていく「ファン型」に打ち込まれます。
2.弦のテンション(張り)が1弦から6弦(7弦/8弦/9弦)まで均一に近くになる。
スタンダート配置では、低音に行くに従ってテンション(張り)が失われていきます。
ファンフレットはファン型になっているので、低音弦の弦長が段階的に延長されるため、スタンダート配置よりも低音弦のテンション(張り)が増し、全ての弦のテンション(張り)が均一に近くなります。
ギター本体で低音弦のテンション(張り)が増す。
これを最大のメリットと感じるギタリストも多いのではないでしょうか。
特に、
- 6弦ギターで6弦のみドロップしている。
- 7弦以上のギターを使用している。
- ダウンチューニングをしている。
上記のようなギタリストの方々は、一度ファンフレットを弾いてみることをおすすめします。
スタンダード配置に慣れてる方は慣れが必要になります。
ただ、アコースティックギターとエレキギターを持ち替えた時に違和感があるように、「弾いてたら慣れる」ほどのものに近い印象です。
True Temperament Fretting System
True Temperament Fretting System(トゥルー・テンペラメント・フレッティング・システム)は、True Temperament社が開発した独自技術です。
搭載されている代表的なギターはCaparison Guitarsから販売されているAPPLE HORN 8 EFでMATTIAS IA EKLUNDH(マティアス・エクルンド)モデルです。
特徴
1.フレットが平行ではない。
スタンダート配置のフレットはすべて平行に打ち込まれていますが、True Temperament Fretting Systemは3弦あたりを中心に少しヘッドよりに湾曲しています。
2.ヌケがよくなる。
ギター本体のヌケがよくなるとギター単体で効果があるというよりは、アンサンブルで本領発揮します。
特に深いオーバードライブサウンドやディストーションサウンドはアンサンブルで埋もれがちですが、ギター本体のヌケがいい事でバランスのとれたアンサンブルに近づくことができます。
3.音がクリアになる。
湾曲があることでピッチ(音高)が安定し、コードを鳴らしたときの出音がクリアになります。
明確なのは異弦同音でナチュラルハーモニクスを鳴らした時の揺れがなくなります。
True Temperament社の公式動画で異弦同音でナチュラルハーモニクスを鳴らした時の揺れがないことを聴くことができます。
解説ギタリストはなんと!
MATTIAS IA EKLUNDH(マティアス・エクルンド)です。
フレットとピッチ(音高)の関係
フレットはある法則で計算された数値で取り付けられています。
※この計算はかなり複雑・・・。
その計算で算出した数値は、割り切ることができない数値で、小数点を四捨五入したものになります。
そのため誤差が発生します。
この誤差は通常人間の耳では聴き取れない/感じない程度の誤差であるため、押弦など気になることはあまりありません。
ただ、ナチュラルハーモニクスを鳴らしたときにこの誤差により、ほんの僅かに揺れを感じます。
この「揺れ」がフレットにより発生した誤差となります。
MATTIAS IA EKLUNDH(マティアス・エクルンド)のスタイルは、ナチュラルハーモニクスを多用するスタイルなので、このフレットを採用しているのも納得です。
まとめ
いかがでしたでしょうか!
フレットは素材が少ない分、サイズによる出音の違いが大きく、フレットによっては力加減や弾き方を変える必要もあります。
ちょっと躊躇してしまいそうですが、フレット変えたら音がより好みになった!しかも弾きやすい!なんてこともあります。
フレットの打ち直しを行う機会はなかなかないと思いますが、新しいギターを買う時やフレット打ち直しの際に参考になればと思います!
お悩み相談コーナーと題し、いただいたギターに関するご質問に回答するコーナーがあります。
小さな悩み、大きな悩みなどに関わらず、気楽にご質問ください。
あたなのご質問で誰かの悩みも解消されるかもしれません!
ご質問お待ちしてます!