音楽理論

移動ド・固定ド

移動ド・固定ド

「移動ド」と「固定ド」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。

音の捉え方の違いなのですが、この二つの考え方が混在していることにより、スタジオで他のミュージシャンの方と会話をする際に齟齬が生まれることがあります。

自分「ここってラですか?」
相手「いやファ#」
自分「え??」
相手「え????」

このようなどっちも合っているのに話が噛み合わない、なんて事が起こることもあります。
しかし「移動ド」と「固定ド」を両方理解しておくことにより、話の食い違いもその場で解決できるようになります。

それでは、実際にその違いを解説していきましょう!

移動ドとは

まずは下の図をみてください。

図1 音名/階名/音程

この図を使って移動ドを説明していきましょう。

まず図の一番上、「CDEFGAB」とアルファベットで書いてありますね。
これを音名といいます。
これは「絶対的な音」です。

つまり、この図の3つ目の音(五線譜の第一線上の音)は何がどうなってもEです。
これは不変であり、揺るぐことはありません。

ギターでいうならば、レギュラーチューニングの6弦開放の音はEであり、5弦開放の音はAです。
これが「絶対的」ということですね。

それに対してその下に書いてある、「ドレミファソラシ」のカタカナ表記。
これを階名といいます。

音名が絶対的な音であったのに対し、こちらは「相対的な音」になります。
こちらは音名と違ってキーによって変化します。

例えば、先ほどの図はCメジャースケールですね。
これを表にまとめると、

表1 Cメジャースケール

音名 C D E F G A B
階名 ファ
音程 P1 M2 M3 P4 P5 M6 M6

のようになります。

次に、Aメジャースケールを同じように書いてみましょう。

表2 【移動ド】Aメジャースケール

音名 A B C# D E F# G#
階名 ファ
音程 P1 M2 M3 P4 P5 M6 M6

なんと今度はAがドになりました。

このように、ドがキー(主音)によって移動してしまうのです。
このような考え方を「移動ド」といいます。

つまり、「移動ド」はどんなキーでも、主音を「ド」と読みます。

当然、音名は絶対音なので移動しません。
これによりキーが変わっても主音からの音程を把握しやすくなります。

固定ドとは

「移動ド」を理解できれば、「固定ド」がどういうものかなんとなく想像出来るでしょう。

「固定ド」はキーに関係なく、C=ドと読みます。
例えば先ほどのAメジャースケールの表2を「固定ド」で考えると、

表3 【固定ド】Aメジャースケール

音名 A B C# D E F# G#
階名 ド# ファ# ソ#
音程 P1 M2 M3 P4 P5 M6 M6

のようになります。

指板でもAメジャースケールを移動ドと固定ドの両方で確認してみましょう。

図2 Aメジャースケール

図3 【移動ド】Aメジャースケール

図4 【固定ド】Aメジャースケール

移動ドと固定ドどちらがいいの?

移動ドと固定ドどちらがいいかの議論は尽きませんが、ギタリストならば圧倒的に移動ドで捉えることをオススメします!

移動ドのススメ①

ギターのコードをフォームで覚えている、というギタリストは多くいると思います。

例えば

図5 メジャートライドのコードフォーム

この形はメジャートライアドの6弦フォームの形です。
ルートは6弦ですね。

これを1Fで押さえたら、おなじみの初心者の壁Fコードです。
また、これを5Fで押さえたらAコードになりますね。

図6 【移動ド】Fメジャートライアド/Aメジャートライアド

このように、フォームさえ覚えていれば、フレットをずらすだけで全てのメジャートライアドのコードが弾けてしまうのです!

もちろん他のコードでも同じですよ。

そしてこれはスケールでも同じことができます。
例えばこのCメジャースケールのポジションを覚えたとします。

図7 Cメジャースケール

これを4F分右にずらして弾くと

図8 Cメジャースケール/Eメジャースケール

となり、Eメジャースケールを弾いたことになります。

このように、ギターでは同じ形のまま左右にずらすだけで、ルートの違う同じコード、スケールを弾くことが出来るのです。

つまりCメジャースケールを覚えれば残りの11個のメジャースケールを覚えたも同然です。

これは音を相対的に捉え、そのままフレットをずらすことで視覚的にも理解しやすいギターならではの特権です。
これを使わない手はありません。

移動ドのススメ②

もう一度表1、表2を見てみましょう。
どちらも階名と音程が一致しているのがわかりますか?

キーが変わっても、ドは完全1度、ミなら長3度、というように固定で変化することがないので、移動ドで考えると作曲やアナライズが断然しやすくなります

作曲者の多くはコード進行をディグリーで考えると思いますので、移動ドとの相性も抜群です。

音程についてよく分からない、という方はこの記事を参考にしてください。

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移動ドのススメ③

例えばAメジャースケールで「F#G#A」という音を歌うとして、移動ドと固定ドを比較してみると、
移動ド「ラシド」
固定ド「ファシャープソシャープラ」
となります。

これをメロディーに乗せて歌うのなんて、どちらが楽かは明らかですよね。

実はこれが冒頭で記載した「ラ」か「ファ#」かの例えの部分でした。

移動ドのススメ④

世の中には絶対音感と相対音感という二つの音感がありまして、ほとんどの人は相対音感で音楽を聴いています。

キーに対しての主音を感じ、その音を基準に高低でその他の音を感じるという音感ですね。
この相対音感こそ、まさに移動ドと同じ考え方です。

例えばカラオケに行った時にキーが高くて下げたりしますよね。
下がったキーに合わせて無意識に主音を感じ、全体を低くして歌う…完全にドが移動しています。

つまり無意識のうちに日常生活で移動ド的に音楽を聴いていたんですね。

移動ドに向かない人

こんな便利な移動ドですが、固定ドの方が向いている人もいます。
それは絶対音感を持っている人です。

日本の義務教育段階での音楽教育は基本的に固定ドで行われています。
皆さんも子供の頃はキーなど気にせずドレミを使っていましたよね?
その為多くの人は移動ドというものを知らずに当たり前のように固定ドに慣れています。

しかも絶対音感を持っているという人は、幼少の頃から人一倍音楽に触れていたでしょう。
その為C=ドと定着してしまっており、C以外をドと言うのが音感的に気持ち悪いそうです。

そういう人は無理せず絶対音感を使っていいと思います。

まとめ

「移動ド」と「固定ド」、なんとなく聞いたことはあったけどよく分かっていなかった、という人は多かったのではないでしょうか。

また「知らずのうちに移動ドを使っていた!」という人もいると思います。

しっかりと理解しておくと他のミュージシャンの方との音楽の会話がぐっとしやすくなりますよ!

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